全社員がブレずに成長する仕組み「セールスフォース・ドットコムが活用するV2MOM」を利用した意思統一とは?

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企業が成長を続けていくためには、全社員の意思統一が欠かせません。掲げられた高い目標を達成し驚異的な成長を遂げるグローバル企業は、どんな取り組みを行なっているのでしょうか?

世界No.1のシェアを誇るCRMシステムを提供しているセールスフォース・ドットコム 。同社は革新的かつ世界有数の成長企業として知られています。今回はセールスフォース・ドットコム開発し、活用する「V2MOM」という仕組みをご紹介します。

パフォーマンスとエンゲージメントを向上させる意思統一の力

企業が成長を続けていくためには、全社員がビジョンを共有してベストを尽くし、目標に向かって邁進していく必要があります。しかし企業規模の大小にかかわらず、全社員が共通の目標のために協力しながら足並みを揃えて進んでいくのは容易なことではありません。

社員の間で意思が統一され、各自が業務に集中しているとき、会社の業績にプラスの影響があると言われています。しかしある調査によると、「会社のビジネス戦略」および「会社の目標達成のために自身に期待されていること」を完全に把握している社員は、全体のたった7%にすぎないそうです。

セールスフォース・ドットコムでは、各自が会社の目標達成における自身の役割を認識できるようにV2MOMのフレームワークを活用しています。それにより社員と組織のエンゲージメントが向上し、全社員が意思を統一して積極的に業務に取り組むことで急成長を遂げているのです。

会社のV2MOM、チームのV2MOM、個人のV2MOM

V2MOMはビジョンと目標を明確化する仕組み

セールスフォース・ドットコム創業者であるMarc Benioffが構築したV2MOM。それは、次の5つの言葉の頭文字を組み合わせたものです。

  • Vision = ビジョン(行いたいことや達成したいことを定義)
  • Values = 価値(ビジョンの追求を支える原則や信念)
  • Methods = メソッド(業務の完遂に必要な行動や手順)
  • Obstacles = 障害(ビジョン達成のために克服しなければならない課題や問題、難点)
  • Measures = 基準 (求める成果の測定可能な指標)

この5つの要素を組み合わせることで、社員が自らの進路を示す詳しい地図と目的地への羅針盤を得ることができるというシンプルな仕組みになっています。

フィードバックを繰り返すプロセス

セールスフォース・ドットコムでは、まず上層部が会社のV2MOMを作成します。他者からのフィードバックを取り入れてそれが確定したら、部門→チーム→個人と伝達され、それぞれのV2MOMを作成していきます。

V2MOMはオープンにされているため、他の社員のV2MOMも閲覧することも可能。社内の誰もが意見できるので、トップダウンでありながらフィードバックが繰り返されていき、そのコラボレーションの結果として組織全体の賛同や意思統一、結束がもたらされる仕組みなのです。そして何より最大のメリットは、全社員が会社のV2MOMに沿った各自のV2MOMを作成できることです。

この作業を通じ、セールスフォース・ドットコムのその年の優先順位と各自の役割、目標、そして自身が会社の成功にどう貢献するのかを全社員が明確に理解していきます。これこそが企業の意思統一であり、セールスフォース・ドットコムの強い組織力の礎なのでしょう。

ポイントは具体的・定量的かつ達成可能な基準で作成し共有すること

それでは、V2MOMはどのように作成されているのでしょう?
作成時に考慮すべきポイントを順にご紹介します。

Vision = ビジョン

自分にとって最も意味があることに焦点を絞り、達成したいことを表します。

  • 今年、達成したいこと(1~3文にまとめる)
  • それは、会社・社員・顧客・コミュニティにどんな影響を与えるか
  • どうすれば、ビジョンが刺激的で楽しくクリエイティブになるか(ビジョンには自分自身を反映するべき)

Values = 価値

ビジョンを追及する上で最も重要な原則や信念。判断や妥協点の指針となります。

  • ビジョンを追及する上で重要な3つの価値はなにか
  • それら3つの価値を実践する意味を誰にでもわかるようにする
  • それら3つの価値は日々の判断や妥協点の指針にどう影響するか

Methods = メソッド

ビジョンを達成するために必要とする具体的なアクション。

  • 会社や上司のV2MOMと連携させる
  • 優先順位が高いものから並べる
  • シンプルでやる気が起きる書き方をする

Obstacles = 障害

ビジョンの達成を妨げるものをあらかじめ特定し、克服する方法を検討します。

  • ビジョンの達成・アクションの実行を困難にするのは何か
  • 障害を克服するために注意を要するのは何か
  • 障害を克服するために具体的に何ができるか

Measures = 基準

成功または正常に完了したことを自分や他人に示すための基準です。

  • 具体的かつ達成可能な範囲で期間を設定する
  • 定量的で測定可能な成果に重点を置く
  • 会社や上司のV2MOMの基準に沿わせる

V2MOM作成のポイント

コピー&ペーストをせずに自分の言葉で書くこと、言葉を賢く選択し焦点を絞って簡潔に記述すること。そして価値・メソッド・基準を優先度順に並べ、重要度がわかるようにします。V2MOMを意思決定の指針として使用する場合、優先順位が重要となるためです。

これらのプロセスを経ることで、全社員が会社のビジョンと目標に沿った、自分自身のビジョンと目標を持つことになるのです。

まとめ

意思の統一でブレずに業務に集中できる

全社員がブレずに業務に集中し、足並みを揃えて目標に向かい邁進するためには、会社と自身のビジョンと責務、優先度を明確にすることが必要です。セールスフォース・ドットコムではV2MOMによりそれを具現化し、会社の業績を押し上げる見えない力としているのです。

V2MOMは一度設定したら終わりではありません。

セールスフォース・ドットコムが具体的にどのようにV2MOMを活用しているかをご紹介します。

 

V2MOMでチームの意思を統一、決定する

チームのV2MOM作成とモニタリング

会社の上流から下流へと降りてくるV2MOM。会社・部門のV2MOMに沿ったかたちで、チームのV2MOMも作成します。それは、チームが協力して進めるフィードバック主導の作業。その作業を経ることで、チームのビジョンや優先順位、責任や成功の基準に関するメンバーの意思が統一されていくのです。

そしてV2MOMは、年間を通してモニタリングし、更新や優先順位の再考を行っていくことを重視しています。それは、成長企業の業務ペースや急速な変化を考慮し、業務の現状をV2MOMに反映させておく必要があるためです。

新たな事案は年間を通して突発的に発生するもの。もし画期的な新プロジェクトを打診された場合、それを引き受けるべきでしょうか?
その意思を決定する際、V2MOMが指針になることがあります。V2MOMをチームの対話のきっかけとして、あるいは意思決定の基準として活用していくのです。

チームのV2MOMの定期チェック

チームのV2MOMは、下記のポイントを定期的にチェックして管理・更新していきます。

・どの点が進歩したか?
・現行のプロジェクトがすべて V2MOM に適合しているか?
・すべての基準が現時点でも正確で最新の状態か?
・次の四半期のアクションプランはどうなるか?
・現状を反映して、V2MOM のどの点を変更する必要があるか?
・どのような援助が必要か?

フィードバックでブラッシュアップし続ける

チームのV2MOMが完成したら、次はメンバー各自のV2MOMを作成します。それまでに各自がチームの優先順位を明確に理解し、受け入れていることが前提であり、重要なポイントです。

作成した各自のV2MOMは、マネージャや同僚、チームにも共有します。そこで受けたフィードバックにもとづき、V2MOMを変更する必要が生じる場合もあるでしょう。しかし V2MOMにはそれだけの時間と労力をかける価値があります。

マネージャとの共有

各自のV2MOMとマネージャのV2MOMの意思が統一されていることを確認します。マネージャは、個々のV2MOMに不足している的確なメソッドや基準を知っている場合もあります。

同僚との共有

V2MOMの達成には、周囲との協力や仲間のサポートが欠かせません。V2MOMを同僚に見せることで、お互いをサポートし合う方法や基準のコラボレーションを促進できます。さらに、一方にとっての障害が、他方にとってのメソッドであるという気づきもあるかもしれません。

チームとの共有

個人のV2MOM作成プロセスをチームにもシェアすることで、チーム全員が状況を把握できます。チームメンバーが各自のV2MOMを作成するとき、他のメンバーのメソッドや基準に関連があれば、自分ごととして捉えることができます。

仕事を続けていると、どこへ向かうともなく滑車の中を走り続けるハムスターのような感覚に陥ることがあるかもしれません。そんなときV2MOMがあれば、自分の業務がチームや会社をどのように支えているのか、そしてその業務がなぜ重要なのかがわかるようになります。

1対1ミーティングの価値とV2MOMの活用

V2MOMを作成して公開した後は、強力かつ有意義な管理ツールとして、年間を通してさまざまな方法で利用していきます。セールスフォース・ドットコムでは、1対1ミーティングで業務に関する状況確認や話し合いを行うときに、V2MOMの活用を奨励しています。

定期的な1対1ミーティングの効果

●エンゲージメントの向上
マネージャが定期的な1対1ミーティングを実施している場合、部下が仕事に対して積極的になる可能性が3倍高くなります。

●生産性の向上
エンゲージメントの高い社員は、エンゲージメントの著しく低い社員と比べて生産性が22%高くなります。また、エンゲージメントが著しく低い従業員は、離職する可能性が4倍高くなると言われています。

●障害の減少
直属部下と定期的にミーティングを行うマネージャは、意思の統一やサポートの提供、プロジェクトの障壁の克服に成功する可能性が高くなります。

優れた1対1ミーティング

1対1ミーティングは定期的に実施することが効果的です。そして次の4つの要素が必要とされています。

・つながり
・インスピレーション
・意思統一
・フィードバック

1対1ミーティングでは、チームのメンバーが共通の認識を持っていることを確認し、適切な目標を示すことが重要です。さらに、タイミングの良い一貫性のあるフィードバックは、個人のパフォーマンスを高め会社の成功の原動力となります。

社員の能力を最大限に引き出し、何がチームのモチベーションを高めるのか。それを知るための1対1ミーティングにも、V2MOMはおおいに役立ちます。

まとめ

意思統一が社員と企業を成長させる

V2MOMを活用した意思統一が社員のエンゲージメントを向上させ、企業を飛躍的に成長させる。それはセールスフォース・ドットコムの成果を見れば明白です。

これからの人材難の時代に、限られたリソースで企業運営を活性化させ強い組織を作るためには、社員が目指すべき目的地までへの地図と羅針盤となるV2MOMのような仕組みづくり・体制づくりが必須となるでしょう。

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