意欲的で持続可能な人材構築のためのキャリアインテリジェンスの活用

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従業員とその個々の役割を考えてみてください。現在の目的地にはどのようにたどり着いたのでしょうか。道筋を一直線に進むための明確な地図を用意していたのでしょうか。それともキャリアパスの過程でいくつかの変更や回り道を経験してきたのでしょうか。

米国労働省労働統計局のデータ(※1)によると、労働者は生涯で平均12の仕事に就きます。さらにGartnerのデータ(※2)によると、1つの仕事に必要なスキルの数が2017年以降、毎年10%ずつ増えています。しかもパンデミックがスキルギャップをさらに悪化させました。現在の役割で成長するか、社内で新しい役割に就くか、社外に出るかはともかく、従業員が継続的学習意識を持ち、スキルの有用性を保ち、順調にキャリアアップするための正しい知識を身につけることは極めて重要です。会社が従業員のキャリアの成功に積極的だと感じれば、従業員の意欲と生産性が高まり、今よりも良い場所を求めて組織を去る可能性が下がります。 

 

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従業員と従業員のキャリアアプローチについて次のポイントを考えてみてください。

  • キャリアについて賢く考えるためのデータが提供されていますか?
  • 自分に必要なスキルを見つけ、その習得方法を定めるためのキャリアプランを立てていますか?
  • テクノロジー、オートメーションその他の業界の動きが今後の自分の仕事にどのように影響し、競争力とエンプロイアビリティを維持するためにどうすべきか理解していますか?

キャリアプランを立てているか、軌道修正が必要かどうかにかかわらず、目的地にいち早くたどり着く手助けをし、意欲と持続性のある人材をサポートするにはキャリアインテリジェンスが重要です。

 

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キャリアインテリジェンスとは

ガートナーの2021年HR優先課題調査によると、HRリーダーの68%が2021年の最優先課題に重要スキル・能力の構築を挙げています。多くの企業が従業員のスキル習得に優先的に取り組む重要性を理解していますが、その多くが過去の知識が将来の役割や将来必要なスキルの正確な道しるべになると思い込んだまま、スキル開発やキャリアプランの計画について時代遅れのやり方に頼っています。キャリアインテリジェンスとは、実用的で効果的なキャリアガイダンスを提供するためのインサイトの力と専門家の知識と経験との融合です。キャリアが受動的に現れるのを待つのではなく、積極的、意図的な批判的思考とキャリアプランニングが求められます。

キャリアインテリジェンスを重要視する文化の醸成は一度限りのイベントではなく、積極的かつ継続的なプロセスです。オートメーション、デジタル化、AIを含めた仕事の世界の急速な変化を考慮し、労働市場の見通し(望まれる状態)と雇用主に求められるスキルを予測する必要があります。端的に言えば、キャリアマネジメントを賢く考えることです。
 
キャリアインテリジェンス(※3)ではキャリアとスキルに関する予測型、データ主導型インサイトと専門家によるキャリアコーチングを組み合わせます。その相乗効果によって、従業員は将来に対応できる最善のキャリアパスを選択でき、組織は適切にトレーニングを受けた持続可能な人材構築に向けて態勢を整えることができます。

 

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インテリジェントなキャリア判断をサポート

2020年12月 ランスタッド・ワークモニター労働意識調査(※4)では、世界の労働者の40%がデジタル時代に求められる新しいスキルの習得に苦戦していることが明らかになっています。従業員の長期的エンプロイアビリティと組織のビジネスアジリティを支えるために、すべての従業員のスキルの有用性を保つには、すべての従業員にキャリア開発とスキル習得の機会を平等に与える必要があります。randstad risesmartが最近行った「Skilling Today」 グローバル調査(※5)では、企業の72%がキャリア開発のためにスキル習得の機会を継続的に提供し、39%は全員にではなく一部にスキル習得とトレーニングの機会を提供していることがわかりました。そしてどの企業もチームリードやマネージャーにスキルトレーニングの機会あるいは要求が偏り(65%)、一方で一般スタッフや潜在能力の高いスタッフは44%、リーダーは42%です。

すべての従業員にスキル習得の機会が平等に与えられれば、エンゲージメントや定着率が高まり、ひいては長期的な採用・オンボーディングコストを抑えられます。ランスタッド・ソースライト2021年人材動向レポート(※6)によると、人材担当者とCレベルエグゼクティブの87%が従業員のリスキリングは人材の定着に役立つと考えています。民主的なスキル習得を図っている企業は眠ったスキルを発掘し、さもなくば成長の機会を見過ごされていたかもしれない将来のリーダーを育成できています。

 

多くの企業が従業員に対して利用できる研修コースの一覧とスキル習得のためのリソースを提供していますが、自分の熱意やキャリア目標に合致し、現在の所属組織にも幅広い労働市場でも需要の高いスキルを身につけるために必要な知見や指導が提供されていることはあまりありません。その結果、本人の手に負えなくなり、必ずしも有用ではないスキルやキャリアパスに目を向けたままになります。

単にデータや選択肢を増やすのではなく、従業員にはスキル習得とキャリア開発目標を達成するための知見と戦略的ロードマップが必要です。キャリアインテリジェンスがあれば、従業員は確かな立ち位置でスキルセットを進化させ、ビジネスニーズの変化に応じて現在の役割で成長し、あるいは社内の新しい役割に挑戦することができます。実用的な知見があれば、現在の役割と目標とする役割に照らして自分のスキルと能力をより正確に把握でき、需要の高いスキル、有用な研修コース、別の役割の提案についてランク別リストを素早く手に入れることができます。

労働市場に関する有意義な知見が手に入れられるとしても、キャリアコーチによる個別ガイダンスはどの従業員にとっても有益です。キャリア分野の専門家が提供する知識はキャリアの選択肢について視野を広げ、自分にとって最善のキャリアやスキル習得に力を注ぐことができます。コーチングガイダンスによってこれまでに検討対象に入っていなかったキャリアを追求でき、眠っていたスキルに気づき、スキルギャップの解消に必要な新しいスキルの構築に目を向けることができ、その結果、ビジネスの成長につながります。

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キャリアインテリジェンスと社内異動を重んじる文化の醸成

2019年のデロイト ヒューマン・キャピタル・トレンドサーベイ(※7)によると、HRリーダーの46%が人事異動に関わる一番の障害としてマネージャーからの抵抗を挙げています。人事異動の利点をフル活用できない大きなハードルです。優秀な人材を自分のチームにキープしておきたいマネージャーからの反対が原因です。その結果、従業員が能力を広げられず、潜在能力を発揮できず、持続可能な人材構築を目指す組織の意図が阻止されてしまいます。

同じ調査では、HRリーダーの70%が組織内での人事異動の想定や人材を共有する文化が不十分または偏りがあると答えています。真の意味でタレントモビリティを実現するためには、組織の全階層、全部署での人材共有を促す文化の醸成が大切です。そのためには例えば、マネージャーにチームが恒久的ではないことを理解してもらい、スタッフ本人が自分のキャリアに主体性を持ち、スキルセットを広げ、社内で成長機会を追求することの価値に気付いてもらう必要があります。 
 
マネージャーは成績優秀者を手放し、他の部署に取られることに躊躇するかもしれませんが、人材共有の文化を築くことによって、そうでなければ知らないままだったかもしれない重要スキルを持つ人材パイプラインが備わることになります。こうした考え方は全員にとっての最善の利益です。従業員のスキルや意欲をより大きなビジネス目標と合致させることができると同時に、個々人の長期的エンプロイアビリティを支えることもできます。

Monster(※8)の最近のデータによると、米国の労働者の実に95%が年内の転職を検討しています。さらにPrudential Financialの調査(※9)では、年内の転職を検討中の従業員が転職を思い止まる一番の誘因として「異動の機会」を挙げています。キャリアインテリジェンスは社内異動の機会をサポートし、機敏で持続可能な人材構築と本人のエンプロイアビリティの強化を支え、その結果、人材の定着が促されます。データから導きだされた仕事とスキル習得に関するリソースとコーチングガイダンスという助けがあれば、社内にチャンスを見つけられるだけでなく、キャリアを前進させる道筋を見出すことができ、組織に留まる可能性が高まります。

 

本記事は、ランスタッド本社配信の記事を再編集の上掲載しています。

 

キャリア開発バナー

 
[参考]
※1 https://www.bls.gov/nls/questions-and-answers.htm
※2 https://www.gartner.com/en/human-resources/research/talentneuron/leveraging-skills-adjacencies
※3 https://www.randstadrisesmart.com/blog/employee-skilling-future-proof-your-workforce-predictive-insights-personalized-career-coaching
※4 https://workforceinsights.randstad.com/hr-research-reports/workmonitor-december2020
※5 https://info.risesmart.com/skilling-today-global-survey-report
※6 https://content.randstadsourceright.com/top-10-hr-trends-for-2021
※7 https://www2.deloitte.com/us/en/insights/focus/human-capital-trends/2019/internal-talent-mobility.html
※8 https://www.hrdive.com/news/monster-95-of-workers-surveyed-considering-changing-jobs/603091/
※9 https://news.prudential.com/presskits/pulse-american-worker-survey-is-this-working.htm

 

 

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