優秀な人材を獲得する鍵はやはりエンプロイヤーブランド

優秀な人材を獲得する鍵はやはりエンプロイヤーブランド

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経済の混乱が始まって1年以上経過し、パワーバランスは労働者から雇用主へと再びシフトしたように見えるかもしれません。世界中で失業率が上昇し、コロナ禍以前に人手不足に苦戦していた多くの企業がポストコロナ時代には人材供給に余裕が生まれることを期待していますが、その正反対の事態が起きています。米国を筆頭に世界に先駆けてV字回復し始めた市場において求人が増加し、ニーズの高い職種はこれまで以上に獲得困難です。

これは、これからの回復期に成長に備えたい企業にとって深刻な課題です。ますます需要が高まるこの時代に欠かせないデジタルスキルを持つ人材の確保は特に、これまで以上に自由がききません。労働市場からの離脱を決めた人も多く、ブルーカラー人材も確保が難しい状況です。この大切な時期に人を集めたいのであれば、企業は自分たちと一緒に働くと何が良いか、説得力ある理由を示す必要があります。

そうは言っても問題があります。多くの企業はコロナ禍でエンプロイヤーブランドに対する投資を止めてしまいました。失業率が上がっているのだから必要ないと考えたからです。ですがこのような状況下と言えども、デジタルトランスフォーメーションが現在進行形である以上、雇用主の評判は人材の獲得に大きな影響を与えます。エンプロイヤーブランドから完全に注意をそらしてしまい、今、もう一度腰を上げたばかりの企業は優秀な人材の獲得競争において後れを取ったことに気付くかもしれません。

労働市場の変化が広く認識される一方で、ランスタッドが行った調査と労働市場データはエンプロイヤーブランドが今なお、優秀な人材を獲得するための鍵であることを示しています。むしろ、世界経済が変化するほど、コロナ禍以前にも重要視されていた従業員価値提案(EVP)を求める従業員が増えています。この事実が物語っているのは、選ばれる雇用主になるためにはエンプロイヤーブランドへの投資を続けなければならないということです。

 

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エンプロイヤーブランディングの重要性

エンプロイヤーブランディングは誤って理解されていることが多く、その結果、会社の評判を築くための努力が不十分または方向を違えていることが多くあります。エンプロイヤーブランドとは要するに選ばれる雇用主としての社内外のイメージです。このイメージが人材の獲得と定着に極めて大きな影響を与え、ひいては人件費にも影響します。

そして多くの場合、企業のエンプロイヤーブランドとコーポレートブランドは結び付いています。この2つは相補性があるため、コーポレートブランドが強力であれば職場としての魅力も高まります。反対にコーポレートブランドに魅力がなければ人材を集める力も足を引っ張られます。その企業のエンプロイヤーブランドが資産であるか障害であるかは往々にしてブランドの戦略とアクティベーションに左右されます。

魅力あるエンプロイヤーブランドには次のような要素が必要です。

  • 十分理解された価値観と文化
  • 職場の透明性
  • 信頼性
  • ブランドの伝道者、推進者
  • 明確に定義された従業員価値提案

 

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パンデミックから得た教訓

多くの企業のエンプロイヤーブランドマネージャーがコロナ禍で抱えている課題の一つはブランドに投資することへの関心の低下です。採用数が減少し、世界中の失業率が上昇し、予算がカットされる中で、ブランドマネジメントに意識を集中させ続けるのは一部の人にとってはたやすいことではありません。2020年はエンプロイヤーブランドに対する投資の優先度が下がりました。

これは経済危機とそれに続く世界的ロックダウンによって、エンプロイヤーブランドにあまり注意を注ぐ必要がなくなったと考えられた結果です。多くの企業がゼロベース予算に動いたことによって、人材獲得部門に制約が課され、反対にこの間、従業員の安全、事業継続、従業員の仮想化の優先順位がはるかに高まりました。

皮肉なことに、これらが優先されたことによって多くの企業の屋台骨が強くなり、ランスタッドの2020年12月ワークモニター労働意識調査によると、回答者の多くがコロナ禍で会社の緊急時対応策によって雇用主に対する忠誠心が高まったと答えています。

では、コロナ禍の企業の行動はエンプロイヤーブランドの外からの認識に影響しているのでしょうか?ランスタッドの2021年エンプロイヤーブランド・リサーチによると、世界全体ではほとんど動きがないようです。ただし地域別に見ると、コロナ禍を経て、企業の魅力度に変動が起きています。

昨年、世界のトップ企業の平均的魅力度は下がっていません。労働年齢成人の調査を行った34市場のうち、雇用主の魅力度が低下したのは10市場、反対に17の市場は上昇、残りははっきりとした動きはありませんでした。

地域別に見ると、結果に差があります。3つの欧州市場では大手企業の平均的魅力度が低下し、3つとも大陸南部に位置しています。

対照的に、アジアでは5つの調査対象市場で魅力度が低下しました。日本、オーストラリア、ニュージーランドではトップ企業の魅力度が上がっています。

米州では、南米の2つの市場で上昇、北米はどちらかと言えば低下傾向です。 

また、それぞれの調査対象市場のトップ企業の多くがトップ3の座を維持し、大手企業に対する国内の働き手の認識はパンデミックでもそれほど変わらなかったことがわかります。ただし、34の調査対象市場のうち25市場では第1位の入れ替わりがありました。

 

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トップ企業の特性は変わらず

パンデミックの初期段階では世界の国々がロックダウンを余儀なくされ、その結果、働き手が企業に一番求める特性は雇用の安定になりました。雇用の安定は常に上位に挙がる項目ですが、残りの2つ、給与・福利厚生、ワークライフバランスに座を明け渡すことはなく、在宅勤務や安全な職場環境といった新型コロナ関連対策は確かに重要ですが、形勢を一変させるものではありませんでした。つまり、日常に苦難が加わった状況でも、働き手の要望はそれまでの年と同じだということです。

 

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2021年以降の戦略見直し 

ランスタッドの2021年グローバル・エンプロイヤーブランド・リサーチで報告した通り、変化の世界においても変わらないものがあります。この事実は人材獲得戦略にとって何を意味するでしょうか。

人材不足は再び悪化し、つまりエンプロイヤーブランドに対する投資は必要不可欠です。パンデミックは多くの不測の変化を起こしました。働き手は自分のキャリア選択を見直し始め、多くの女性が労働市場からはじき出され、時間給のブルーカラー労働者が不足しています。従い、コロナ禍以前に立てられた戦略に従うだけでは残念な結果に終わってしまう可能性があります。今後計画するアクティベーション戦略やメッセージ発信では労働者に起きた劇的変化を考慮しなければなりません。

そのためにはエンプロイヤーブランドの強みを社内と社外の視点から継続的に評価する必要があります。従業員、臨時雇用者、求職者、消極的求職者を含め、すべてのステークホルダーの認識を理解して初めて、ブランドを強化するための正しい戦略的、戦術的アプローチを効果的に定めることができます。

最後に、ブランドの強み評価を定期的に実施したり、目標やイニシアティブを戦略化するためにサードパーティーの手を借りることは予算に制約があるこの状況下でコスト効率を高める有効な選択肢です。社内のナレッジや能力に投資するのも一つの効果的手段ですが、時間と相当のリソースを必要とします。社内リソースに余裕がある場合でも、中立的立場の第三者からの助言は有益です。 

パンデミックが仕事の世界を様変わりさせ、企業は人材獲得戦略に新たな課題を抱えることになりました。さまざまな変化に立ち向かう中にあっても、人材獲得戦争が繰り広げられる今、魅力ある強力なエンプロイヤーブランドを維持する重要性を軽視すべきではありません。 

 

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