ケーススタディ:IKEAのエンプロイヤーブランディング

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多くの人が働きたいと思うIKEA。その人気の理由は何でしょうか。すべての企業がイケアのエンプロイヤーブランディングから学ぶことができます。

IKEA:家とは愛情があるところ

一部の人は低賃金労働、時間外労働という(正当または不当な)イメージを理由に小売業界で働くことを敬遠します。ですが家具・インテリア用品販売大手、IKEAは、すべての業界の中で最も働きたい企業の一つに選ばれています。

IKEA スウェーデン リテールのタレントマネージャー、ラーシュ=エリク・フリードルフソン氏はIKEAグループのエンプロイヤーブランドの一番の強みは家具・インテリア用品に対する共通の情熱であり、これが「多くの人の暮らしをより豊かに」につながっているからだと話します。

IKEAは急速な成長を遂げ、次々と新しい市場へと参入しています。人材へのアピールに欠かせないこうした理想を維持するためにどのような取り組みが行われているのでしょうか。

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売上だけで成功を定義する会社にはなりたくない

IKEAは1943年、当時17歳のイングヴァル・カンプラードが創業しました。創業者(Ingvar Kamprad)のイニシャルである‘I’と‘K’、育った農場、エルムタリッド(Elmtaryd)の‘E’、ホームタウンであるアグナリッド(Agunnaryd)の‘A’をとって名付けられました。

それからおよそ70年、IKEAは形、機能性、品質、サステナビリティ、低価格を融合させたデモクラティックデザインを理念に世界最大級の家具・インテリア用品販売チェーンへと成長を遂げ、今では世界27カ国で300を超える店舗を展開し、コワーカー(一緒に働く仲間)と呼ばれる15万人以上のスタッフを抱えています。

ただ物を売り、売上だけで成功を定義する会社にはなりたくないとフリードルフソン氏は話します。「お客様の快適な住まい作りをお手伝いすることによって、日々の暮らしを豊かにできます」

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デモクラティックデザインという理念

IKEAの使命の根幹に据えられたデモクラティックデザインという理念も、同社のエンプロイヤーブランドを特徴付ける価値観です。「履歴書よりも価値観や姿勢を重要視しています。

IKEAと理想を共有する人材を見つけるうえでの私たちの強みの一つは、豊かな暮らしのための快適な住まいの大切さは多くの人が自分のこととして考えられるという点です。

ですから選考プロセスの一環として、応募者には面接に自宅のリビングルームの写真を持参してもらい、どこが気に入っているか、どのような理由でそうしたのかを説明してもらいます。その会話を通じて、家具やインテリア用品、優れたデザインに真の熱意を持ち、お客様の暮らしを豊かにするために情熱を注げる人材をいち早く見極めます。私たちが求めるコワーカー、一緒に成長できるコワーカーです」

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投資に対する見返り

採用後も、コワーカーに対する投資の重要性を認識し、労働条件と報酬パッケージの継続的改善が取り組まれています。コワーカーの福祉に対する姿勢は事実として明確に現われ、英国においては生活費を反映して独自に設定される法定最低賃金を上回る「生活賃金」の支払いを約束した初めての小売業者であり、スウェーデンではコワーカーに最低労働時間を保証するため、不定期の呼び出し勤務制を採用していません。

IKEAではまた、コワーカーがそれぞれの可能性を十分に発揮できるよう力を注いでいます。「誰にも何か得意なことがあります。私たちはコワーカーとマネージャーたちに個々の強みを見つけてほしいと考えています。

そうすればマネージャーは本人の適性に合ったトレーニングを受けさせ、コワーカーは自分の仕事に必要なスキルを磨く機会を最大限得られます。コワーカーが努力するほど、私たちもサポートします。コワーカーには年に1度のタレントウィーク期間中に、それぞれのキャリアストーリーをウェブサイトで発表してもらっています。どんな可能性があるのか周囲にとっても刺激になります」(フリードルフソン氏)

まさに勝利の公式です。IKEAは2015年のランスタッドアワードにおいて、スウェーデン・テレビ、ボルボ・カーズを抑え、スウェーデンで最も働きたい会社に選ばれました。従業員の意欲と満足度の高さが平均を上回る定着率と企業としての力強い成長を維持する支えになっています。IKEAが成長するほど売上が伸び、売上が伸びるほど価格の維持あるいは値下げが可能になります。

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IKEAウェイへの信頼

組織の成長がますます加速し、IKEAの人材戦略とそれを支えるエンプロイヤーブランドの重要性がかつてなく増しています。

「エンプロイヤーブランドに力を注ぐ理由を問われたら、その答えは簡単です。今後の事業拡大計画を支えるために、向こう4年間で7万5,000人の増員が必要です。数さえ揃えば良いわけではありません。リーダーシップ職にいち早くたどり着ける人材が必要です。IKEAの価値観を共有し、IKEAウェイの真価を理解できる人材が必要です。

IKEAの形式ばらない物事の進め方はスウェーデンに比べて階層的な国々では極めて異質に見えるかもしれません。私たちはもちろん文化の違いを尊重しますが、『IKEAウェイ』をできるだけ保ちたいと考えています。

ですから、もし誰かが管理職面接で『自分のオフィスを持てますか?』と質問したら、『いいえ。あなたの席はコワーカーと一緒です』と答えることになります。私たちはマネージャーに店舗で過ごす時間を大切にしてほしいと考えています。

お客様が何を求めているか、コワーカーがどんな問題に直面しているか、最終的には自分の給料がどこから生まれているかをきちんと理解するためです。それまでになじみがなかった人を含め、多くが私たちのやり方を斬新だと感じているようです。コワーカーは意見する機会が増え、マネージャーは一体感を感じることができます」(フリードルフソン氏)

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小売業界のニューフェース

「私たちは、テクノロジーや顧客の期待の変化にグローバル規模でついていかなければなりません。リピート商品や定番商品の販売はデジタルチャネルへと徐々にシフトしていますので、各店舗は知識や情報を提供する場としての役割が増しています。

お客様はベッドルームやキッチンをどのような見た目にしたい、雰囲気にしたいというアイディアを持って店舗を訪れ、コワーカーにはそのアイディアを形にするためのアドバイスを期待しています。どんな選択肢があるのか。スペースに収まるのか、予算に合致するのか。

こうした提案型販売には経験とIKEAに対する愛着心、詳細な商品知識に裏打ちされた専門スキルが必要です。こうした専門能力を育成する必要があるからこそ、私たちはコワーカーへの投資と、楽しく、やりがいのある仕事の提供が重要だと考えています」(フリードルフソン氏)

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勇気を持って変える

では他の企業はIKEAから何を学べるでしょうか。スキルを比較的必要としない仕事であっても意味は必要です。IKEAは、人として成長でき、お客様の豊かな暮らしに貢献できることをコワーカーたちが知っているからこそ成功しています。そして、たとえそれが逆風の中を進むことだとしても、IKEAの価値観とIKEAウェイのために立ち向かう態勢が整っています。

こうした特徴的資質がこれまでの理想の人材の確保に重要な役割を果たし、デジタル化によって小売業のスタッフに求められる役割が変化する中、これからも大きな意味を持ちます。おそらく品出しや会計にかける時間はどんどん少なくなり、商品知識やブランドを投影する能力の重要性が増していきます。

そのためには意欲が高く、学習能力が高く、組織のために長期的に貢献する心づもりのある人材が必要です。従業員に投資し、説得力のある使命を与えることによって、IKEAは価値の高い従業員を獲得し、維持する決定的競争力を手に入れることになります。

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イケアのエンプロイヤーブランディング

小売業界は、世界全体での働きたい業界ランキングにおいて15業種中14位です。ですがスウェーデンでは第4位にランクインし、IKEA、H&M、ICAなどスウェーデンを代表するさまざまな小売業グループに対する高い評価が反映されています。

IKEAは本拠地であるスウェーデンの全業種を対象にしたランスタッドアワード2015年・2016年において最もエンプロイヤーブランドの高い企業に選ばれました。リーダーシップの強さ、環境・社会に対する意識、充実した教育研修、雇用の安定、財務健全性、快適な職場環境、ワークライフバランスの各項目についてトップを獲得しています。

 

 

 

ランスタッドはエンプロイヤーブランディングを通じて、企業の採用活動や組織力向上、そして働く人と企業の双方が真の力を発揮できる労働市場の創造に貢献したいと考えております。長年にわたりエンプロイヤーブランド・リサーチを行なっていますので、その最新レポートをぜひご活用ください。

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