コロナ禍におけるエンプロイヤーブランド

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コロナ禍におけるエンプロイヤーブランド

現在のような危機的状況にあっては、エンプロイヤーブランドこそが企業のブランドそのものと言えます。

社会、クライアント、市場にいる人材、そして従業員は、このコロナ禍において企業の姿勢が真摯であったかどうかを、きっと忘れないでしょう。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行による危機のため、非常に多くのビジネスが混迷を極めており、世界中のさまざまな企業が、かつてないほどの課題と不確実性に直面しています。このような状況下では、エンプロイヤーブランディングの優先度は高くないように思えるかもしれません。しかし、今こそまさに、組織が社内外からの評判を重視し、守り、高める配慮をすべき時です。早急に採用を行う必要があろうと、人員削減に直面していようと、透明かつ誠実な方法で、企業の価値観と約束を守ることが重要なのです。

新型コロナウイルス感染症により、多くの企業が、エンプロイヤーブランドを試される状況に直面しています。企業によっては、業務や売上が大きく減ったことにより、やむを得ず人員削減が必要となっています。対照的に、医療、医療用品、物流、家庭用品メーカーなど、コロナ禍でも必要不可欠な業界では、世界中のニーズに対応するため、早急に人員を増やさなければならないという局面にあります。しかし、どのような採用状況下であろうと、エンプロイヤーブランドが重要であることに変わりはありません。

今こそ、企業は新型コロナウイルス感染症による危機への対応の中で、エンプロイヤーブランド戦略をどのように位置付けるかを検討すべきです。レイオフ、一時帰休、手当や昇給の凍結といった措置は、企業ブランドだけではなく、エンプロイヤーブランドにも影響を与えます。しかし、こうした措置がどのように受け止められるかは、どう伝え、どのように実行するかにも左右されます。組織のリーダーは、難しい決断をする必要があっても、従業員のアイデンティティと約束を守る必要があることを、より一層肝に銘じる必要があります。まさに今こそ、企業理念の真価が問われる時であり、それが従業員に言ってきたことと一致しているかどうかが分かるのです。

真摯であり続け、新たな行動方針にも既存のメッセージを織り込むことを優先する必要があります。ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されているこちらの記事の著者は、ブランドが「ブランドの総体的な約束」の実現に焦点を当てた方が、企業は人材と繋がりやすいと主張しています。今こそ、企業がエンプロイヤーブランドを高めるべき時なのです。

現在の困難な環境において、企業が人材にとっての魅力を高めたいのならば、提供する製品またはサービスが、より大きな社会的ニーズがあるのか、個人にとって価値があるものなのかを再考した方がよいかもしれません。ブランド力や組織の全体的な評判にとって、新たな状況に適応することは重要なのです。

実際、多くの企業は、今後数カ月間、経済および社会の回復に貢献できる方法を探っています。顧客、従業員、コミュニティの再起を手助けするため、すでに同様の取組みを行っているかもしれません。企業が今日行う社会貢献の取組みは、組織のリーダーが強く認識している問題について意識を高めると同時に、エンプロイヤーブランドを強化します。

収益に関わることだけではなく、社会貢献に取り組むことは、企業の社会的責任の重要性を率先して示すことになります。これまでも、その重要性を説いていたのなら、今こそ、そのことを示すチャンスです。人材を惹きつけ、企業理念と文化を強化するのに多大かつ即時に影響を与えることができるのです。

 

 

レイオフが必要な場合

従業員のレイオフという、できれば避けたい仕事に直面した際も、企業理念に忠実であることを基本方針とすべきです。既に世界中で、新型コロナウイルス感染症による経済的損失が大きかった企業は、人員の一部を解雇しています。3月末時点において、米国では膨大な数の人々が失業給付を請求しています。ヨーロッパにおいては、デンマーク、英国、オランダの政府が影響を受けた労働者の給与の大部分を保障しているため、一部の労働者は失業から守られています。オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染症による失業者が100万人に達する可能性があります。

どの程度の人員を削減するのかは、組織のリーダーによって決まります。しかしながら、人材の専門家として、エンプロイヤーブランドへの影響や従業員への衝撃を弱めることはできます。これまで以上に、価値観と約束を守り、エンプロイヤーブランドを高める必要があります。そうしなければ、困難な時にあって、信頼できないとみなされてしまいます。

従業員への影響を小さくするのに求められるのは、お金を使うことではなく、率直なコミュニケーションにより実現する透明性です。労働者の多くは事業が被った経済的損害を認識しており、人員削減に対する理解もあります。とはいえ、無神経な方法で人員削減を行うべきではありません。

EVP*1の中核をなすのが人である限り、人員削減をするにあたって、少なくとも誠実さと思いやりを持って人を大事にしなければなりません。レイオフした人々を再び雇おうとした際に、彼らはその時のことを忘れてはいないからです。会社に残った従業員に対しても、フォローが不十分であれば、世界の経済活動が正常に戻った際に退職してしまうかもしれません。では、企業理念、約束、そしてエンプロイヤーブランドを尊重すると同時に、従業員に悪い知らせへの心構えをしてもらうには、どうすれば良いのでしょうか。

まずは、事業の現状を透明化することです。率直で明確な方法で従業員に情報を提供し続けることで、会社は状況を正直に伝えてくれていると安心してもらいます。従業員が何も知らされずにいると、組織は混乱しやすくなり、エンプロイヤーブランドを傷つける可能性があります。不確実な時期には、透明性が最も重要です。

次に、他の機会について明らかすることです。従業員は、新たなスキルを習得して会社に残れる可能性があるのかをはっきりさせてもらえること、再就職をするのであれば、支援制度があるかどうかを知りたいはずです。従業員が早急に新たな役割に備えるための人材開発プログラムが既にある場合は、そうした能力を社内で活用できるようにします。他方、再就職する人材が他の組織に就業する手助けをするため、外部の転職支援サービスを利用するのも一つの手段です。

そして、全員に精神的な支援を提供しましょう。カウンセリングやその他の支援制度を最も必要としているのは、レイオフの対象となる従業員ですが、一方で、会社に残る従業員のニーズは考慮しているでしょうか。同僚が解雇されるのを見ることは、業績や士気に長期的な影響を与える可能性があります。組織における人員削減に悩む人を助けるセーフティネットがあることも確認しましょう。

リーダーも、ともに苦しむ姿を示す時。この時期、組織のリーダーこそが模範を示すべきです。従業員が解雇される一方で、経営陣が高額のボーナスを受け取り続けるのは非倫理的です。リーダー自身が有言実行しないのに、他人に犠牲を払うよう求めるのは危険なことです。

最後に、EVPとエンプロイヤーブランドを指針としましょう。企業理念については、一貫性を保ちます。明確なトーンで、価値観が分かるような伝え方をすることによって、この非常時でも従業員をサポートしていきます。順調な時もそうでない時も頼れる友人のような存在であることが大切です。

コロナ禍においてエンプロイヤーブランドを管理するのは難しいことですが、真摯で一貫したアプローチを採用すれば、従業員やその他のステークホルダーの期待をよりうまく管理できます。目下の状況により、世界中の全ての組織は多大な影響を受けています。不測の事態に対してどれだけうまく対応し、今後の対策を立てるかによって、従業員とエンプロイヤーブランドに永続的な影響が及びます。今日の行動は、明日の人々の記憶に残ることとなるのです。

 

*1 Employee Value Proposition 従業員に対して、企業としてどのような提供できる価値を示すこと。

 

<出典>
■managing your employer brand during a crisis.
https://www.randstad.com/workforce-insights/employer-branding/managing-your-employer-brand-during-a-crisis/

 

 

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